2019年 03月 21日
針ねずみと笛吹き(12)
翌朝、針ねずみは、自分が前の日よりわずかながら元気になったように思いました。
笛吹きはまた、きのうとは違った曲を吹いてくれました。
丁寧に心を込めて、ゆっくりと…。
今度は、温かなぬくもりのある曲でした。
おかあさんに抱かれているような調べでした。
針ねずみは生まれるとすぐにおかあさんから離されて、ほかの仲間たちと一緒に大きなかごの中で人間に育てられたのでしたが、遭ったこともない、憶えてすらいない、優しい優しいおかあさんの胸にしっかりと抱かれて、安心して満ち足りて甘えているような気持ちがしました。
笛の音にゆりかごのように揺られて、ゆうらりゆうらりと針ねずみは甘い心地の中をたゆたいました。
そうして明くる日は、また少し元気を取り戻しておりました。
にほんブログ村
童話・昔話ランキング
by nakamura-fumine
| 2019-03-21 09:02