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童話の時間

針ねずみと笛吹き(9)


 曲はどんどん速くなり、終いには笛の音なのか風の音なのか耳鳴りなのかわからないほどになりました。
 風が吹き荒れて、辺りの草木は嵐のように打ち鳴らされました。
 川の波も渦を巻いて逆立っては、ざんざんと水面を叩きました。

 少年たちの悲鳴は泣き声に代わり、だんだん細く高くなり、その声もやがて聞こえなくなりました。

 踊るのを止めたくても止められない三人の少年たち。

 独楽のようにくるくると回り、足を高く蹴り上げたかと思うと今度は地面を踏み鳴らし、風に吹きちぎられる木の葉のようにきりきりと舞い続けます。

 そしてとうとう三人とも、折り重なるようにばたばたと倒れ伏しました。

 そのときになってやっと、笛吹きは笛を吹くのを止めました。

 針ねずみは温かいポケットの中で、その全てを遠い夢のように幽かに聞いておりました。

 息も絶え絶えになった少年たちをそのままにして、笛吹きは静かに家路に着きました。
 すっかり疲れて眠りかけた針ねずみをポケットから出して、優しくその胸に抱きながら。






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by nakamura-fumine | 2019-03-07 10:49

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