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童話の時間

ブログ引っ越しのお知らせ

 「童話の時間」へ来てくださった皆さま、ご訪問、ありがとうございます。

 さて、突然のことで失礼いたしますが、この度、童話を書く場所を「カクヨム」へ移させていただくことにいたしました。
 今、「番兵と蟻」という新しい童話を第3話まで書いたところです。

 新しい住所へも、いらしてくだされば嬉しく存じます。

 こちらのブログはしばらくの間そのままにしておき、ランキングクリック欄のみ、やり方がわかり次第、外す予定でおります。
(ランキングはどちらも、9月23日に外しました。)
 
 よろしくお願いいたします。

 




<新住所>
 
  https://kakuyomu.jp/users/fumine-nakamura



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# by nakamura-fumine | 2019-09-19 11:22

鷹(あとがき)

 
 つたないお話を読んでくださり、ありがとうございました。

 このお話も、塑田久子さまの三題噺スイッチでお題をいただいて作りました。
 いただいたお題は、「置物、鷹、話す」でした。

 最初は「置物」と「鷹」から木彫りの鷹を連想し、その鷹の置物が話をすることから始めようと思いましたが、うまく動いてくれません。
 木彫りの鷹をパソコンの画像で探し、それを見ながら想像を膨らませようとしましたが、これ、と思えるものが見つけられませんでした。

 それで、「置物」を「はく製」にしたらどうか、と思いつきました。
 となると、元は生きた鷹でなければなりません。
 そして、生きた鷹がはく製になるためには、殺される必要が出てきます。

 生きた鷹がはく製にされたら、何を思うか? 
 そうしたら、どうしたいと思うか?
 その思いはどうなるだろう?
 そうしてそれを叶えるには?

 …と考えを発展させて、このお話ができました。

 途中、鷹の苦しみや、苦しくても何もできることがないことが、読んでいてやりきれなくなるかもしれない、ということは心配でした。
 先のわからない、辛く苦しいことを、わざわざ読みたい方は少ないと思います。
 そんなことは現実だけで十分ですから。

 ですので、最後まで読んでくださった方には本当に感謝しております。
 
 鷹は意識を変性させることで苦しみから抜け出す道を見つけましたが、現実にはそううまくいくことばかりではなく、私たちは何とか自分の機嫌を取ったり気晴らしをしたりしながら、どうにか生きていかねばなりません。

 どうぞ、皆様も私も、自分をあやせるものをひとつでも多く見つけられますように、と願います。
 そしてその時、お話や絵本、本やほかの芸術、文化に触れることが少しでも慰めになってくれますように、と祈ります。









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# by nakamura-fumine | 2019-09-06 11:55

鷹(22)


 次に月が訪れた時、鷹は気がつきませんでした。
 身じろぎもせず、黙ったまま立ち尽くしていました。 

 しかし、月には、鷹がその時、心と記憶の風景の中を飛んでいるのだということがわかりました。

 
「ああ、お前さんは、飛んでいるのだねえ。
 
 …今は、野の上を飛んでいるのかい?」


 はく製の鷹は、何も言いませんでした。

「…山の上を飛んでいるのかい?」

 鷹はやはり、黙ったままでした。


「…よかったのう、……本当に、よかったのう……」

 月は吐息のように言いました。
 そして、それ以上話しかけることなく、そっと帰っていきました。

 
 そしてそれっきり、月が鷹を訪ねてくることは、二度とありませんでした。




 鷹は何もかも忘れて飛んでいました。
 休むことも、獲物を探すこともなく、ずっと飛び続けていました。
 一心不乱に、何も考えず、ただただ両の翼を動かし続けていました。

 野の上を、山の上を、海の上を、そして何故か行ったことのないはずの場所さえも。

 
 けれど、鷹が気づくことはありませんでしたが、その景色に夜が来ると、月は黙って、飛び続ける鷹の姿を静かに照らしているのでありました。






                                    (終わり)






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# by nakamura-fumine | 2019-09-02 19:17

鷹(21)


 その日から、鷹の心はとても安らかになりました。
 これからも飛べる、何度でも飛べるかもしれないという希望が、彼の心を明るく照らしました。



 静かな心で、鷹はその日の来るのを待ちました。
  
 そして、あの日見た夢をくり返し思い出しては丁寧になぞりました。

 すると彼の中で、それはますます鮮やかになっていくのでした。

 鷹は何度も、自分が今、本当に飛んでいるような気持になりました。
 夢を思い出しているのか、記憶の中の自分を思い出しているのか、それとも実際にとんでいるのか、彼は時折、区別がつかなくなりましたが、それはもう、どうでもよいことでした。

 どれであっても、同じことになっていましたから。

 そしてそれらがすっかり合わさってひとつになったとき、鷹の裡に全ての感覚がよみがえってきたのです!









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# by nakamura-fumine | 2019-08-29 10:27

鷹(20)


 早くこのことを話したいと、鷹は月の来るのを待ち焦がれました。
 それで、月の来てくれた晩、その晩はカーテンが隙間を作っていて、そこから月の光が細く射していたのでしたが、鷹は息せき切って話し出しました。


「お月さん、お月さん、俺、飛んだんです。
 とうとう、また飛ぶことができたんです。

 今はまた元に戻ってしまったけれど、あの日、俺は本当に飛べたんです。

 だって次の日、目が覚めたら、俺の身体には飛んだあとの疲れが残っていたんですから、確かなんです。

 …ああ…、素晴らしかったなあ……」


 鷹の話すのをじっくりと聞いていた月は、静かに口を開きました。

「それは夢というものかもしれん。
 
 おまえさんは、夢を見たのかもしれん。

 …しかし、そうかい、また飛ぶことができたのかい。

 よかったねえ、本当に、よかったねえ……」


「夢? 夢というものだったんですか、あれは?

 …それは、また来てくれるんでしょうか?

 俺、また、飛ぶことができるんでしょうか?…」


「……ああ、また見ることができるよ。
 何度でもできるよ。
 きっと、できるとも」


 それを聞くと、鷹の心は歓びではちきれそうになりました。

「また、夢はやってくるのか。
 俺はまた、飛ぶことができるのだな。

 ……なんということだ!
 あんな日々は、もう、二度と来ないと思っていたのに……!」 








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# by nakamura-fumine | 2019-08-25 07:36

自作の創作童話のブログです

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