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童話の時間

泣き虫なねずみの赤ちゃん(あとがき)


 「泣き虫なねずみの赤ちゃん」をお読みくださり、ありがとうございました。

 このおはなしは、久し振りに三題噺に依らず、自分で着想したものです。

 「泣き虫なねずみの赤ちゃんが、人形を作ってもらっても泣き止まず、ねずみの人形(ぬいぐるみ?)をつくってもらって泣き止んだ」という発想が突然浮かんで、そこから作りました。

 お話が浮かぶときは、ぱっと全体が一瞬で出来上がってしまうこと、なんとなくするすると最後まで引き出せてしまうこと、ああでもない、こうでもないと苦心している間はまとまらず、放っておいたら少しずつ目鼻がついてくること、など色々ですが、その為にはいつも、「つくらないでいる時間」がとても大切なのだと思っています。

 本を読んだり、画を見たり、音楽を聞いたりして心に栄養を与える時間。
 それが自然に芽を出すまで、いじりすぎないで育つのを待つ時間。
 疲れたら何もしないで心を休ませる時間。

 …というわけで、今でも傍らに、お話の種や蛹がたくさん転がって、目覚める時を待っているのです。


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# by nakamura-fumine | 2019-01-17 14:41 | Comments(0)

泣き虫なねずみの赤ちゃん(9)


 おかあさんねずみはその声にはっと身を起こしました。
 その頭には、あることがひらめいていました。

 それはこの人形が、それを抱いていたこの家の女の子と同じ姿をしている、ということでした。
 黒いおかっぱ頭も、くりくりとした黒い瞳も、健康そうな赤いほっぺも、何もかもそっくりです。

 ああ、あのお人形は、あの女の子自身だったのだ、あの子のおかあさんは、自分の子供の人形を作ったのだ、とやっとわかったのです。

 そして、それなら、ねずみである自分がその赤ちゃんに縫ってやる人形は、人間でなくねずみの姿になるはずだ、と。

 おとうさんねずみの言うとおりでした。


 すると、急にはっきりと目が覚めて来て、おかあさんは急いで、赤ちゃんがその小さな手に握れるような、桃色の細いしっぽの付いた、ちいさなちいさなねずみの人形を縫い上げました。

 しっぽの先に、ふるとちりちり鳴る銀色の鈴をつけてね。

「さあ、赤ちゃん、お人形ができましたよ。
 いい音のする、かわいいねずみのお人形さんよ」

 赤ちゃんねずみは小さい手でその人形を握って、元気よく手足をばたつかせました。
 ちりちりと鈴が鳴って、赤ちゃんはようやく泣きやんだのです。

「あかちゃん、ごめんね。おまえはいい子だったのね。
 泣き虫で駄々っ子のの、困ったちゃんじゃあなかったのね」

 おかあさんはそう言って赤ちゃんを抱き上げました。

 すると赤ちゃんは初めて機嫌よく「ちゅっ、ちゅっ」と声をたてて笑いました。

 まるで小さい花が次々に開いていくような笑い顔でした。




                                (終わり)


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# by nakamura-fumine | 2019-01-11 12:38 | Comments(1)

泣き虫なねずみの赤ちゃん(8)


 「おいおい、かあさん、赤ん坊が泣いているってのに、寝ちまったのかい?
  しかたないなあ…。この子はずっと泣き通しだからなあ…。
  よっぽど疲れているんだな」

 おとうさんねずみは大泣きする赤ちゃんに手こずりながら、慣れない手つきでおむつを替え、ほ乳びんでお乳を飲ませました。
 赤ちゃんは涙の粒をほっぺに残しながら、ごっくんごっくん音をたてて飲みました。

 お乳を飲ませ終わったとき、おとうさんは、赤ちゃんの小さな握りこぶしから何かがはみ出しているのに気がつきました。

「なんだ、こりゃあ。おい、赤ん坊よ、いったい何を握っているんだい?」

 おとうさんねずみが赤ちゃんねずみのこぶしをそっと開いて見ると、そこに握られていたのは小さな小さな人形でした。

 それはおかあさんねずみがあれからあと、何度も作り直したものでした。

 人間の形をしています。
 黒いおかっぱ頭で、黒い糸でフレンチノットのししゅうをした黒い目がついています。
 ほおにはほんのり紅が差してありました。
 赤い服を着て、髪には服とおそろいの赤いリボンが付いています。

「何だ、こりゃあ。人間の形をしているじゃないか。
 これじゃ赤ん坊が泣きやまないはずだよ。
 おいおい、かあさん、起きとくれ。
 おれたちはねずみなんだから、人形だってねずみの姿をしていなくちゃおかしいだろう。
 早く起きて、ねずみの形をした人形をこしらえてやっとくれ」



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# by nakamura-fumine | 2019-01-05 10:29 | Comments(1)

泣き虫なねずみの赤ちゃん(7)


 おかあさんねずみは反省して、次はもっと小さい人形をこしらえました。
 ちょうど、前の半分くらいの、赤ちゃんが抱きかかえられるくらいのをね。

「さあ、これでもう大丈夫ね」

 ところが、それでも赤ちゃんは泣きやみません。

「…これでも大きすぎるのかしら? 
 そうよねえ、この子はまだ、生まれたばかりの赤ちゃんで、歩くどころかはいはいもできないし。
 …それじゃあ今度は、もっとずっと小さく作りましょう」

 おかあさんは、赤ちゃんがその小さな手に握れそうな小さな小さな人形を縫いました。

「さあ、きっと今度は気に入るはずだわ」

 おかあさんは泣いている赤ちゃんの手に人形を握らせました。
 なのに、赤ちゃんは、手も足もばたばたさせて泣くではありませんか。

「…ああ、もう、何度やってもこの子は泣き止んでくれないのね。
 いったいどうしたらいいの?」

 おかあさんは途方に暮れてしまいました。
 そして、それでも赤ちゃんを寝かしつけようと、ふとんをとんとん軽くたたいて、赤ちゃんをあやし続けました。
 優しい優しい声で、ときどき話しかけてなだめながら。
 けれどそのうち疲れてしまって、つい、うとうとし出しました。

 赤ちゃんが昼も夜も泣くので、このところあまり眠っていなかったのです。

 赤ちゃんねずみは大きな声で元気よく泣き続けていましたけれど、おかあさんねずみの疲れはそれよりずっと深くて、やがておかあさんはこっくりこっくり居眠りを始め、とうとううたた寝をしてしまいました。





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# by nakamura-fumine | 2019-01-01 13:33 | Comments(0)

泣き虫なねずみの赤ちゃん(6)


 たしかあの子の人形は、黒い毛糸の髪をおかっぱにして、大きな黒いビーズ玉の目を縫いつけてありました。
 赤いワンピースを着て、とも布のリボンが頭にもついていました。
 いま思い出しても、とてもよくできた、いきいきとしたかわいらしい人形でした。

「あんな人形を作ってやったら、赤ちゃんだってどんなに喜ぶでしょう。
 そうすればきっと、いまのように泣かずにすむかもしれないわ」

 おかあさんねずみは、さっそく女の子の持っていたような、といってもねずみにとって、という意味でですが、そんな大きな人形をこしらえてやりました。

「さあ、赤ちゃん、おにんぎょさんですよ。
 おっきいでしょう。かわいいでしょう」

 おかあさんねずみは人形をふとんに入れて、赤ちゃんのからだを半分、もたせかけてやりました。

 赤ちゃんねずみはちょっとの間、変な顔をしていましたが、やがて前よりもっと大きな声で泣き出したではありませんか。

「どうしたの? どうしたの? 驚いたの?
 お人形が怖いの? 気に入らなかったの?」

 おかあさんは慌てて、せっかく作った人形をふとんから抜き出しました。
 赤ちゃんのふにゃふにゃしたからだを支えて、そうっと元に戻しました。

「…大きすぎたのかしら?
 …そうよねえ、あの女の子は人間だもの。
 わたしたちねずみより、ずっと大きいもの。
 それに、あのとき女の子はもう、歩いていたし。
 その子にとっての人形の大きさなら、うちの赤ちゃんには大きすぎるわよねえ…」





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# by nakamura-fumine | 2018-12-30 16:22 | Comments(0)

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